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人生はエビフライ♪

ボルサリーノ ~ フリックストーリー

 
 
『太陽が知っている』(1968年)以降何本も
アラン・ドロン主演作を手掛けているジャック・ドレー監督は
ドロンの見せ方をもっともよく心得ている映画人の一人と言えましょう
ちょっとひねくれてしゃれたセンスはドロンと相性ぴったりでした
 
 
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ボルサリーノ』 (Borsalino)1970年・フランス
 
監督:ジャック・ドレー 原作:ユージェーヌ・サコマノ 製作:アラン・ドロン
脚本:ジャン=クロード・カリエール、ジャック・ドレー、ジャン・コー、クロード・ソーテ
音楽:クロード・ボラン 撮影:ジャン・ジャック・タルベス 編集:ポール・カイヤット
出演:ジャン=ポール・ベルモンドアラン・ドロンミシェル・ブーケ、カトリーヌ・ルーヴェル、
フランソワーズ・クリストファ、コリンヌ・マルシャン、ニコール・カルファン
 
 

 アラン・ドロンは主演とプロデューサーを兼ねていることが結構多く、自分自身をいかによく見せるかということに極めて意図的だったと言えます。また、あえて名優と共演することで自分と共演者を対比させることにも積極的だったのではないかとも思います。この2本意外にも、『さらば友よ』のブロンソン、『冒険者たち』のリノ・ヴァンチュラ等々、ドロンは演技者としてはまず確実に共演者に食われますが、本人はそんなことは100も承知だったのでしょう。彼はそんなことには全くおかまいなく、全くひるまずに、どの作品でも堂々と自分の持ち味を出し切っています。
 
 本作はアラン・ドロンジャン=ポール・ベルモンドの夢の共演が実現した1本。内容は結構陰惨で、ギャング同士の血で血を洗う抗争は凄まじく、また、ドロンとベルモンド演じる駆け出しのギャングが成り上がっていく際の手段を選ばないえげつなさもひどいもんです。しかしながら、ジャック・ドレーの演出による映画自体のテンポの良さと有名な主題曲の軽妙なリズムのおかげで実にからっと小気味よく仕上がっておりますね。ラストの途方に暮れたようなドロンの表情が印象的。
 
 
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映画のストーリー(Movie Walker より)
一九三〇年のマルセーユ。ギャングとチャールストンが入り乱れるこの街へ、三ヵ月のケチな刑を終えたシフレディ(アラン・ドロン)が出所して来た。彼はさっそく、手下と共に自分を密告した男のバーを襲い放火した。次に、なじみの女“天使のローラ”(カトリーヌ・ルーヴェル)に会いに行った彼は、その女のことでカペラ(ジャン・ポール・ベルモンド)と派手な殴り合いを始めたが、同時にダウンし、その時以来、二人の間には奇妙な友情が成立した。やがて二人は、ボッカスという親分に認められたが、失敗つづきのありさまであった。その後、ボッカスの黒幕であるリナルディ弁護士(ミシェル・ブーケ)の頼みで、魚市場を支配しているエスカルゲルに力を貸すようになった。当時、マルセイユを本当に支配していたのは、マレロとポリという、二大親分であった。マレロとリナルディとのつながりを知ったシフレディは、大胆な野望を実現化するチャンスを、狙っていた。カペラは、これには反対だったが、ポリの情婦ジネットに惚れたため、承知した。そして、二人はポリの資金源である食肉倉庫を襲撃したが失敗し、ひとまず田舎へひきあげ、反撃の日を待った。二人のまわりに無頼の仲間と武器が集まってきた。行動が開始された。まずポリの暗殺、つぎにリナルディ、と二人のまわりには、次第に血の匂いがたちこめるようになった。そして、残る大親分マレノ一味との間の、日毎の殺し合いの末、相手の本拠に乗り込んだ二人は、ついにマレノを倒した。こうして、マルセイユはシフレディとカペラの手中におさまった。シフレディは豪壮な邸宅を立て、パーティを開き、得意の絶頂にいたが、カペラは違っていた。彼は、今こそ、このマルセイユを、去らねばならないと思っていた。両雄は並び立たないと……。そして、カペラがカジノを一歩出た時、何者かの銃弾が彼の命を奪っていた。
 
 
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フリックストーリー』 (Flic Story )1975年・フランス
 
監督 ジャック・ドレー 脚本 アルフォンス・ブーダール、ジャック・ドレー 原作 ロジェ・ボルニッシュ
製作 アラン・ドロン 、レイモン・ダノン 撮影:ジャン・ジャック・タルベス 音楽:クロード・ボラン
出演:アラン・ドロン、ジャン=ルイ・トランティニャン、クロディーヌ・オージェ、
レナート・サルヴァトーリ、ポール・クローシェ、アンドレ・プッス
 

 アラン・ドロンとジャン=ルイ・トランティニャンの夢の競演が実現した、フランス映画らしい刑事・犯罪もの。原作は主人公の刑事自身の自伝的ノンフィクションで、(私は未読ですが)アラン・ドロンが原作と作者の生きざまに非常に共感を覚え、自らプロデュースし主演したといういわくつき。アラン・ドロンは当時油の乗り切った40歳で、どうすれば自分が最も美しくかっこよく見えるか知りつくており、また、共感を覚えただけあって、有能だけどちょっと不器用で人間味あふれる刑事のロジェ・ボルニッシュを実に的確に演じています。
 
 そしてジャン=ルイ・トランティニャンは素晴らしいの一語につきる。トランティニャン演ずる冷酷な殺人犯のエミール・ビュイッソンは、文字通り眉毛一つ動かさずに簡単に人を殺してしまう、いわば根っからの生まれついての恐ろしい犯罪者ですが、2回だけ感情というか心の動きらしきものを見せます。1回目はクロディーヌ・オージェ演じるロジェ・ボルニッシュの恋人が弾くピアノの音色に思わず気持ちがゆるみ、すきを見せてしまうとき。その一瞬のすきをねらってボルニッシュはビュイッソンの逮捕に成功します。2回目は逮捕後の聴取の際に自分を売った仲間の話に及んだ時。そいつの首をのこぎりで切ってやりたい!と感情を吐露します。それを見事に演じるトランティニャンが本当にすばらしい!
 
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映画のストーリー(Movie Walker より)
 国家警察局のロジェ・ボルニッシュ(A・ドロン)は、恋人カトリーヌ(C・オージェ)との結婚を間近かに控え、折あらば大きな手柄をモノにして、主任ポストを獲得しようと、こころ秘かに狙っていた。一九四七年、戦争が終わってからまだ間もない年の三月。敏腕刑事として同僚からも一目おかれているロジェのもとに、ある日とてつもない大きな事件がころがり込んできた。暗黒街の大物で冷酷きわまりない殺し屋エミール・ビュイッソン(J・L・トランティニャン)が脱獄したというのだ。ビュイッソンは、実兄のル・ニュス(A・プッス)、仲間のボレック(M・バリエ)、マリオ(R・サルバトーリ)の協力で首尾よく娑婆に出るとすぐ、かつて自分を密告したティボンを愛用の拳銃P38で射殺した。幼い頃からアル中の父親に盗みを強いられて育ったビュイッソンの暗い過去。その冷酷な才能と度胸は、ひたすら暗黒街の仇花である悪の栄光に接近し今ではフランス中を震えあがらせる殺人鬼として君臨しているのだ。ビュイッソン一味は、ボルニッシュの捜査活動を嘲笑するかのように第二の犯行を行った。ブルジョワの集まる高級レストランを襲い、客の身につけていた金目のものを強奪したのだ。ボルニッシュは、犬に仕立てあげたレイモンからの密告でようやく一味の隠れ家をつきとめたが、ル・ニュスとボレック兄妹を逮捕しただけで、ビュイッソンは逃がしてしまった。度重なる後手後手捜査の責を問われて、ビュイッソン事件からおろされたロジェ班は、ケチな犯罪係りに廻されてくさりきっていたが、ベルサイユ郊外の森の中で発見されたマリオの死体にめぐりあった時は狂喜した。このことから、ようやく姿を消していたビュイッソンの足どりが割れたのだ。徴税所襲撃の準備のためにラ・メール・ロワ旅館に身をよせているビュイッソンのもとに、ロジェはカトリーヌと同僚のイドワーヌ、ダロスを連れて乗り込んだ。といっても刑事としてではなく、一民間人の気さくな四人連れという恰好で、通りすがりにたまたま食事に立ち寄ったという大芝居。ビュイッソンは何者とも分らない四人組にひどく警戒の色を見せていたが、やがてカトリーヌがレストランのピアノに向い、ピアフのヒット曲を奏でると、その殺し屋の冷たいまなざしのなかに、一瞬あたたかく和むような光がキラリと浮かんだ。ほんの一瞬の油断を捉えたロジェがいきなりビュイッソンに飛びかかって、背後からはがいじめにした。三六件の殺人で起訴されたエミール・ビュイッソンは、セーヌ重罪裁判所で死刑の判決をうけ、一九五六年二月二八日に執行された。