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BABYMETALが“元洋楽少年”を熱狂させる理由

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はは~
キーワードはこれ↓ね!
「アイドルに免疫のない元洋楽少年」

なんで自分があんまり興味沸かないのかも
分かったような気が…

これおもろいです



BABYMETALが“元洋楽少年”を熱狂させる理由【国内篇】 市川哲史が人気曲から紐解く
2015.06.13

 昭和の昔から、女子アイドルは<やらされてる感>を常に背負っている。それは宿命なのだが、と同時に彼女たちの器量の見せ場でもある。
 例えばAKB48グループは、ずっと<やらされてる感>を漂わせてきた。総選挙とかチーム再編とか、運営サイドからのお達しに振り回されながら生き抜く姿は競争社会と自己責任の縮図で、まさに<やらされてる感>ワールドそのものだったりする。
 しかし峯岸みなみが坊主頭になった一昨年あたりから、生身の女たちの執念がとうとう決壊――ここにきて<やらされてる感>を乗り越えた者たちの修羅の場と化している。アイドルグループというより、エゴを隠しきれない女たち、だ。
 ももクロの場合は、世間的には自由奔放な<逝くまで少女>のイメージだが、実は大きいおともだちの妄想を「元ネタがわからない」まま一身に引き受けている。とはいえ<やらされてる感>とは真逆の、豪快な<やってあげてる感>はなんとも痛快で心地好い。
 すると今度はあまりにもストイックすぎて、一分の隙もない<やらされてる感>の美学に到達しちゃったアイドルが現われた。

 BABYMETAL最大の魅力は、「アイドルがヘヴィメタルを演る」という<茶番>を全身全霊賭して具現化している点にある。馬鹿馬鹿しければ馬鹿馬鹿しいほど、その完成度は高い。
 たとえば「Catch me if you can」は怒濤のインダストリアル・スラッシュ・メタルで迫り来るが、かくれんぼの歌だ。
 たとえば女子アイドル必須の自己紹介ソングなのに「BABYMETAL DEATH」は堂々のゴスメタルで、ナパーム・デスとスリップ・ノットが格闘している。
 たとえばチキチキとブレイクビーツが効いたラップメタル曲は、「結婚するならやっぱりパパ♡」と悪魔の微笑みで金品をねだるローティーンの愛娘が唄う「おねだり大作戦」に。この曲おもいきりリンプ・ビズキットの名曲「マイ・ジェネレイション」してるのだが、日本海溝クラスのこのギャップなら彼らも本望だろう。きっと。
 ついでに書けばSU-METALのソロ曲「紅月―アカツキ―」は「紅」、メジャーデビューシングルの世直しメタル曲「イジメ、ダメ、ゼッタイ」は「X」と、共にXの名曲を徹底的に「再生」していて笑わせてくれる。特に正統派メロスピ(=メロディック・スピード・メタル……だっけ?)の後者は、あの<Xジャンプ>ならぬ<ダメジャンプ>でベビメタと客席が一体化するのであった。たしかに初期Xの基本はハロウィンだもんな。
 海外ファンが「ギミチョコ!」を「デスメタルとEDMの渦が甘ったるいJ-POPのメロで一変するから、わけわからん」、BPM200超えのベビメタ最速の新曲「Road of Resistance」は「超高速のメロスピとアニソンが奇跡の融合をしちゃったよ」と、いちいち面白がるのも無理はない。
 要はどんなにポップなメロディでも、楽曲自体は超ド級のメタルサウンドになってしまうわけだ。そしてそんな速くて厚くて重くて複雑な<ヘヴィメタルの樹海>をバックにしながら、全編キレっキレのフォーメイション・ダンスでライヴを支配するBABYMETALの姿は、ちょっと感動的ですらある。プラチナ期以降のモー娘。ももクロよりも、ダンスのキレと完成度は明らかに高い。
 特に2学年上のSU-METALお姉さんより背も歳も少しだけちびっこの、まるで双子なYUIMETAL&MOAMETALがツインテール&ニーソックス姿でひたすら踊りまくる<全力少女>っぷりは完璧で、まさにアイドルの面目躍如といえる。私はロリコンではないが、特にフランス人なんか萌えすぎて死んじゃうんじゃないか?
 そう、BABYMETALである。ユーザーの立ち位置によってその温度差は激しいものの、いま最も「たまらない」アーティストなのだ。
 そもそもは2010年、多人数女性グループアイドル・さくら学院のクラブ活動、軽音部ならぬ「重音部」から派生したユニットだ。「ヘヴィメタルサウンドをバックに激しいダンスと可愛い歌詞を唄う、年端のいかぬ3人組の女性アイドル」という、<アイドルとメタルの融合>がお題目だけれども、言ってしまえば当初は「企画物」の一つに過ぎなかっただろう。ざっくりした企画だもの。
 ところが制作陣の、おそらく面白半分で始めたはずのメタル魂が止まらなくなったようで、楽曲も演出もとにかく凝りに凝り始めると、やがて2012年秋に山海塾姿の超技巧派メタル職人たちによる<神バンド>がライヴで生演奏を担うに至り、本気で<ヘヴィメタルアイドル道>を邁進する羽目になったわけだ。数奇な話である。
 そんなBABYMETALがいま、<21世紀最大最強の瓢箪から駒>になりつつある。
 日本国内では昨年から武道館2days→さいたまスーパーアリーナ→(アイドルなのにオールスタンディングの)幕張メッセ(失笑)と、ライヴのキャパは3万人規模まで膨張中。新曲のリリースや配信は極めて稀な中、成長記録のように随時作品化されるライヴDVD/BDがばんばん売れている。
 画期的だったのは「ギミチョコ!!」のMVが昨年、You Tubeで2000万回以上も再生されたことか。しかも内1500万回は海外ユーザーなのだから、なぜか日本よりも海外が激しく反応してしまった。それだけにレディー・ガガが昨年夏、自らの全米ツアー5公演でベビメタをオープニングアクトに起用したのも当然の話だろう。
 そして昨年に続き今年も、有名ロックフェス出演を含む自身2度目の海外ツアーを精力的に実行中だ。メキシコシティトロント、シカゴ、コロンバス、ミュンヘンストラスブールチューリッヒ、ポローニャ、ウィーン、フランクフルト、ベルリン、レディングにリーズ……ばはははは。
 実際、最新映像作品『LIVE IN LONDON』には昨年7月と11月のロンドン公演がWで完全収録されてるのだけど、英国人たちが本気で熱狂している。彼らのクラウドサーフやサークルモッシュが、もはやただのオタ芸にしか映らないほどだ。11月の会場ブリクストン・O2アカデミーなんて5000人超満員だったが、昔シンニード・オコナーやレディオヘッドを観た会場なだけに<思えば遠くへ来たもんだ>感は尋常じゃないぞ、おい。
 『日経エンタテインメント!』最新号掲載の《2015年上半期ヒットランキング》では16位と一般大衆人気はまだまだ鋭意奮闘中だが、こうした海外人気がベビメタの追い風になっているのは間違いない

 新年早々の1月10日、ベビメタのさいたまスーパーアリーナ公演『《LEGEND“2015”~新春キツネ祭り~》』を観た。そして私が最も惹かれたのは、なぜか開演前の時間帯だった。
 まず場内に流れるBGMが、当たり前だがひたすらメタルだ。私の音楽評論家としての範疇にメタルはいないのだけれど、それでもメタリカアンスラックスジューダス・プリーストパンテラアイアン・メイデンレイジ・アゲインスト・ザ・マシーン程度ならさすがにわかる。
 すると、革ジャンの下に古今東西のヘヴィメタTシャツを着た輩が嫌でも目立つことに気づく。
 でもって最終的には、2万人も集まってるのになぜ、おっさん客ばかりが大量に群れ集っているのか思い知らされた次第だ。
ヘヴィメタルっておじさんが好きな音楽なんですよねー」教え子の女子大生(20歳)が爽やかに教えてくれた。おいおい。
 付け加えるなら30代後半以上のメタルおじさんは、<アイドルに免疫のない元洋楽少年>なのだ。2010年代以降のアイドルが一糸乱れず高速かつ複雑なダンスを踊ることを、これまで知る由もなかったのだ。そんなうぶなロック中年が初めて遭遇したアイドルが、自分が若かりし頃熱狂したヘヴィメタをハイスパートに唄い踊る可憐なベビメタだったら、そりゃもう虜でしょう。メタルとダンスでWトランス状態だもの。
 同じくももクロも「おっさん」と「ロック好き」にかなりの訴求力を誇るけども、「メタル限定」とクローズな分だけ、おっさんたちのベビメタ愛はより深いわけだ。
 そして<おっさん>に<ヘヴィメタ>に<海外>と、これだけ局所的に熱烈支持されてるにもかかわらず、従来のドルヲタや肝心の一般ユーザーへの浸透がまだまだ待たれるとは、BABYMETALはつくづく特殊なアイドルなのである。
 しかしそれだけに、彼女たちのこれからを実は勝手に危惧するおっさんがいる。
 振付担当のMIKIKOMETAL女史によれば、ベビメタのキレっキレダンスはやはり「あの年齢だからできる」らしい。特に今春中学を卒業したばかりのユイメタ&モアメタは、未だに「加減」を知らぬまま爆発的に激しく踊り続けている。度々見せるジャンプの際も「そこまで跳ねますか」と感心するほど、高く跳躍してるし。「体重が重いとできないと思う。いまのそんなに贅肉もついていない身体だからこそできてるんです」。ごもっとも。
 安藤美姫浅田真央が大人の身体になるにつれて、四回転やトリプルアクセルの<跳ぶ跳ぶ詐欺>常習犯になったのと同じ理屈だよなぁ。二人共まだ中学生体型を保ってるからいいようなものの、身体の成長はやがて避けられまい。いやキレが鈍る以前に、もしユイモアの身長がスーメタと変わらなくなったりしようもんなら、あの美しきベビメタ・シンメトリーも崩壊してしまう。そもそもロンドン公演の時点でユイモアが見せる表情が既に、時折大人っぽくなってたりする。ああ。
 もしかしたらBABYMETALの活動期間は、生物学的に考えればもはやあまり残されていないのかもしれない。彼女たちがBABYMETALでいられる時間は、残り僅かなのだ! 的なキャラクター性も含め、茶番は《ベビメタ》という一大ロック・エンタテインメントへと昇華しつつある。前出の女子大生はこうも指摘した。
「でもベビメタの子たち、想像してたのと全然違うアイドルになっちゃったと思ってますよきっと」
 だから人生、面白いのだ。

市川哲史(音楽評論家)
1961年岡山生まれ。大学在学中より現在まで「ロッキング・オン」「ロッキング・オンJAPAN」「音楽と人」「オリコンスタイル」「日経エンタテインメント」などの雑誌を主戦場に文筆活動を展開。最新刊は
『誰も教えてくれなかった本当のポップ・ミュージック論』(シンコーミュージック刊)