ちゃーりーはかめのぶろぐ

人生はエビフライ♪

海外ロックスターの遺言騒動、日本でも現実の問題

 
 
 
 
 
 
まぁどうせドラブルになるほどの遺産なんかないし
私には全然関係ないっすね(笑)
 
とかいって
もし奥さんが隠し財産持ってて
「夫には1円たりともあげない!」
って遺言書いてたらどうしよ~(涙)
 
 
先に死んでやる~!!
 
喜ばれたりして(号泣)
 
 
 
 
2014/4/4 7:00(日本経済新聞
 先ごろ来日公演も行った、英国の人気ロックスターの恋人に突然の不幸があり、引き続き行われる予定だったオーストラリアなどの公演が中止されるというニュースがありました。先週には亡くなった恋人が準備していたとされる遺言書の内容が大手紙サイトのゴシップ欄にまことしやかに掲載されるなど、海外メディアの報道が過熱している様子がうかがえます。
 真偽はともかく、画像付きで紹介された遺言書なるものを見ると、比較的シンプルな内容であることが分かります。全部で7条で構成され、そのうち第3条から第5条までが遺産の帰属先を記した部分です。おおまかにいえば、第3条と第4条に「遺産をパートナーに残す」ということが書かれてあり、第5条には「親族は遺産分けから除外する」という旨が明記されています。
 真偽の分からない、しかも相続ルールが日本と異なる外国の話ですから、詳細な内容についての検討はこれ以上は控えます。ひとつだけいえるのは、同じように「(籍を入れていない)パートナーに全財産をのこす」「親族には渡さない」といった内容の遺言が出てくるケースは、日本でも現実に起きているということです。
■戸籍のつながりがなければ原則として相続人ではない
 以前にも「内縁・事実婚の夫婦が直面する相続の現実」でお伝えしましたが、正式に入籍していないカップルの場合、パートナーが死亡しても残された人間に遺産の相続権はありません。いくら生前に夫婦として暮らし、苦楽を共にしながら一緒に生きてきたかけがえのない存在だとしても、まずは「戸籍上の関係があるかないか」が優先されるのが現実です。事情はどうあれ、戸籍のつながりがないなら原則として相続人ではなく、遺産分けの話し合いに参加する権利はありません。
 実際には戸籍のつながりのある相続人ではなく、籍の入っていないパートナーこそが故人の晩年を心身両面から支えたケースは少なくないでしょう。その献身が報われない事態への心配は、当然のように出てくる話です。その手当のために生前に遺言書を準備して、パートナーにも遺産が渡るようにしておくことは珍しくないといえます。

 中には「遺産の一部だけではなく、すべてをパートナーに渡したい」と考える場合が出てきます。「血縁のある相続人がいるにはいるのだけれど、ずっと疎遠で交流も薄いので、悪いとは思うけれど遺産を残す気持ちになれない」といったケースです。
 「遠くの親戚より近くの他人」との慣用句があるくらいですから、こうした感情が起こること自体は昔からよくあると思います。ましてや相手はただの「他人」ではなく、日々の生活を共にしている大切な「パートナー」です。「いま近くにいてくれるこの人にこそ、できるだけ多くの遺産を残したい」と考えることは不自然ではないと思います。
■「死後は全財産をパートナーに」は大きなトラブルの壁に当たることも
 ただし残念な事実があります。「死後は全財産をパートナーに贈るので、他の親族にはちょっと遠慮してもらいたい」という故人の意向は、現実的には大きなトラブルの壁に当たるケースがあります。「遺留分」という、特定の相続人に対する遺産分けの「最低保障」の考え方が発動して、パートナー側と親族側とが完全に対立する場合があるからです。
 故人からみて兄弟や姉妹(あるいはおい・めい)が相続するケースでは問題が少ないのですが、その他の場合はもれなくこの「遺留分」の壁が登場するといってよいでしょう。故人からみて子どもや孫、あるいは親などが相続人となる場合には、遺産に対しての最低保障のようなものが認められています。いくら「パートナーに100%」という故人の明確な遺志があっても、波風が立たず無事に運ぶとは限らないのです。
 最低保障である遺留分を侵害された場合、相続人は「さすがにやりすぎでしょう。私に保障された分は戻してください」と請求できる決まりがあります。ただ、この請求する権利を行使するかしないかは、相続人の判断に委ねられています。遺留分に足りていなければ必ず請求されると決まっているわけではありません。
この遺留分は、故人の遺志でも消すことができない非常に強い権利です。いったん請求されれば、「返さない」ことはできません。故人からもらった遺産相応の金額を相続人に渡さなければなりません。そしてここでもまた、「籍のあるなし」が大きな影響を及ぼします。
 例えば「早くに離婚を経験し、別れた妻も、妻が引き取ったひとり娘も、以降まったく交流がなくなった」状況の太郎さんがいたとします。その後、太郎さんは再婚することも、新たに子どもをもうけることもありませんでした。現在は籍を入れていないパートナーの花子さんと2人で暮らす太郎さんが、「このまま花子に遺産の全部を渡したい」と決めた場合、没後にはどのような展開が待っているのでしょうか。
■最低保障である遺留分は「本来の相続分の半分まで」
 この場合、どんなに疎遠でも、太郎さんの娘の相続権がなくなることはありません。太郎さんにとっては唯一の相続人となり、本来なら遺産の100%を相続できたことになります。
 最低保障である「遺留分」は「本来の相続分の半分まで」娘に認められます。つまり100%の半分ですから、遺産の50%が遺留分の請求対象です。
 仮に太郎さんの遺産の名義が、遺言書によりいったん花子さんにすべて書き換わったとしても、その50%という大きな額が「娘からすぐに請求されるかもしれない、非常に不安定な状態」なのです。
 もし太郎さんが花子さんと入籍していたら、この比率はどのように変わるのでしょうか。この場合でも娘に対しての最低保障である「遺留分」が、「本来の相続分の半分」に変わりありません。
しかし、花子さんが入籍していることによって、「本来の相続分」の部分が大きく異なってきます。本来の相続分は、後妻である花子さんが50%、娘が残りの50%です。娘の遺留分はさらにその半分ですから、25%にとどまります。
 つまり花子さんにとっては、籍が入っているかいないかで「娘の影」のちらつき方が大きく異なることになるでしょう。遺産をもらったとして、そこからどれだけ娘に戻さないとならないのか、その割合が相当な程度で変わってくるのです。
■遺産の相続権について、遺留分などの問題が発生しやすい
 さまざまな事情で入籍をしていないパートナー同士の場合、もちろん入籍した夫婦と同様に「老後の介護や生活費の負担を誰がするのか」など現実的な問題を抱えることに変わりありません。さらにそれだけではなく、パートナーの死後、遺産の相続権について「遺留分などの問題が発生しやすい」「遺留分の影響も大きくなってしまいやすい」という特有の問題点に直面する場合があります。
 籍が入っていなくても「遺産をパートナーに残す」「親族は遺産分けから除外する」ということ自体が禁じられているわけではありません。しかし実際にやろうと思うと、根深い相続トラブルに出くわす可能性が増してきます。希望を最大限に尊重しながらも何とかソフトランディングできる方法はないか、より注意深い検討が必要だと思います。
 
川原田慶太(かわらだ・けいた)
 1976年大阪生まれ。司法書士宅地建物取引主任者。2001年3月、京都大学法学部卒。在学中に司法書士試験合格。02年10月、かわらだ司法書士事務所開設。05年5月、司法書士法人おおさか法務事務所代表社員就任。資産運用や資産相続などのセミナー講師を多数歴任。