ラビット・ホール ~ アンチクライスト
自らの不注意さえなければ
あわなかったかも知れない事故で
愛する子供を失ってしまったとき
父親と母親とは全く異なる心理状態に…
この2本は、その差は結局は
母性と父性の基本的な違いに基づくことを
違う視点から甘さを排し鋭く抉っています
監督:ジョン・キャメロン・ミッチェル 脚本:デヴィッド・リンゼイ=アベアー
ギギ・プリツカー、パー・サーリ、ディーン・ヴェネック
製作総指揮:ビル・リシャック、リンダ・マクドナフ、ブライアン・オーシャ、ダニエル・リバース
マイルズ・テラー、サンドラ・オー、パトリシア・カレンバー、ジョン・テニー、ジャンカルロ・エスポジート
ニコール・キッドマンの素晴らしすぎる演技に嘆息する秀作。腫れ物にさわるような周りの対応を十分すぎるほど意識しながらもどうしようもない心の葛藤・微妙な心理の変化が手に取るように表現されています。アーロン・エッカート、ダイアン・ウィースト、マイルズ・テラーといった共演者たちも相当な名演技をしていますが、ニコール・キッドマンの前では霞んでしまいます。
「悲しみは小さくはなるけれど、決して消えることは」、「その悲しみも故人の残してくれた大切なもの」。この二つのセリフにテーマが凝縮されているのでしょう。乗り越えるには相当な時間と労力を要するし、結局乗り越えることは出来ずに更なる犠牲だけを生んでしまうかもしれないという危険すらはらんでいることも受け入れねばならない重さ…。
『アンチクライスト』 (Antichrist)
製作総指揮:ペーター・ガルデ、 ピーター・アールベーク・ジェンセン
編集:アサ・モスベルグ、アナス・レフン
ハードコア・ポルノ仕立ての新作が話題の、絶対一筋縄ではいかない監督ラース・フォン・トリアーのショッキングな問題作。気の弱い人には最後まで観るのは相当にしんどいかも知れませんが、それこそが監督の狙いで、監督の思うつぼに陥らないよう頑張って観たい作品。そもそもこの人は自らのセラピーのために映画を撮り続けているそうですから…。たった二人だけの出演者のウィレム・デフォーもシャルロット・ゲンズブールもホントようやるわ…。
激しくセックスをしている間に、ベビー・ベッドから抜け出した一人息子が窓から転落死してまうというショッキングな設定からしてもう手がつけられません。この事故をきっかけに妻は精神を病んでしまい、セラピストの夫は必死に妻を治療しようとするが、事態はひたすら悪い方へ悪い方へと展開し、妻の知られざる暗黒面すら明らかになり、目を覆うようなクライマックスへ…。強烈な痛みすらも持て遊ぶラース・フォン・トリアーに決して負けてはいけません!